シェイクスピアと日本語 言葉の交通

シェイクスピアと日本語 言葉の交通

  • 中谷森(著)/2024年2月
  • 3500円(本体)/四六判上製272頁
  • 装丁:中本那由子

シェイクスピアを日本語で表現するというのはどういうことなのか――。明治以降の日本におけるシェイクスピア戯曲の翻訳・翻案作品のなかの「言葉」の在りように着目し、日本語と英語を同時に深い角度で眼差した創作者たちの意図、またシェイクスピア作品を取り巻く文化交渉の諸相を論じる。

(ISBN 9784861109416)

目次|contents

まえがき

 

序章 最前線としての辺境

 

第1章 再び〝ことば〟の方へ―研究と実践の通史

1.先行研究を流れる二つの水脈

2.日本のシェイクスピア翻訳と翻案のこれまで

3.本書の構成―四作品の“ことば”が照らすもの

 

第2章 演劇の言葉と小説の文章―小林秀雄作『おふえりや遺文』

1.作品の背景と先行研究

2.演劇と小説の分断―一九三一年発表時の文体

3.おふえりやと言葉の分裂―一九三三年と四九年の改訂

4.演劇と小説の接続―小林の『ハムレット』批評

5.演劇の言葉と小説の文章の紐帯

 

第3章 翻訳を通じた文体創造―福田恆存訳『ハムレット』

1.作品の背景と先行研究

2.せりふ劇と日本の伝統芸能の言語的差異

3.シェイクスピアの韻文と日本語の韻律

4.膠着語の問題と語尾の工夫

5.文末表現の工夫がもたらす独自性

6.「物」としての言葉

 

第4章 脚韻の再創造―木下順二訳『マクベス』

1.作品の背景と先行研究

2.一九七〇年から八八年までの変遷

3.シェイクスピア『マクベス』における脚韻の意義

4.一九八八年版における脚韻の再創造

5.悲劇の翻訳と脚韻

 

第5章 シテの言葉と声―平川祐弘作・宮城聰演出『オセロー』の夢幻能翻案

1.作品の背景と先行研究

2.平川祐弘による謡曲台本の考察

3.宮城聰による初演の演出の考察

4.東西を往還する言葉

5.言葉を旅するデズデモーナ

 

終章 言葉なき死の向こう側

 

あとがき

 

著者|author

中谷森(なかたに・もり)
津田塾大学学芸学部英語英文学科・専任講師。バーミンガム大学修士課程修了(シェイクスピア研究)。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士号(人間・環境学)。専門は、イギリス演劇研究・比較演劇研究。特に日本のシェイクスピア翻訳・翻案作品の研究。主要論文に「福田恆存訳『ハムレット』にみる翻訳を通じた文体創造」(2021)、“The Shifting Appreciation of Hamlet in Its Japanese Novelizations: Hideo Kobayashi’s Ophelia’s Will and Its Revisions”(2020)など。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

レオナルド・ダ・ヴィンチの源泉―様式・文学・人物表現

レオナルド・ダ・ヴィンチの源泉

様式・文学・人物表現

  • 田辺清(著)/2023年3月
  • 4000円(本体)/A5判上製202頁
  • 装丁:長田年伸

「万能の人」レオナルドの絵画作品とその実像に迫る
芸術と学問の個性的な発展――イタリア・ルネサンスを代表し「万能の人」と称えられた画家の作品を、素描技法や下絵による未完成作または完成作として再検討することで、その創造行為の源をひもとく。また様式や制作年代、物語等の主題、身体・風景描写の形態や色彩、後世の文学作品への影響を考察し、レオナルドの多様な思索が表出するありようを解き明かす。
(ISBN 9784861107733)

目次|contents

Ⅰ はじめに
Ⅱ 画家レオナルド――未完成作を中心に
1.絵画における未完成――レオナルド・ダ・ヴィンチの場合
2.フラ・バルトロメオとレオナルド・ダ・ヴィンチ――「未完成」祭壇画をめぐって
3.レオナルド・ダ・ヴィンチの《自画像》(トリノ王立図書館所蔵)について
4.レオナルド・ダ・ヴィンチの《洗礼者聖ヨハネ》について――「形態」と制作年代
Ⅲ レオナルド絵画の文学的源泉
1.W・B・イエイツとレオナルド・ダ・ヴィンチ
2.ヴァザーリ、ペイター、イエイツ……――レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》をめぐって
3.W・B・イエイツ『レダと白鳥』の視覚的源泉
Ⅳ レオナルドの女性表現――聖母マリアを中心に
1.レオナルド・ダ・ヴィンチ《白貂を抱く貴婦人》(《チェチリア・ガッレラーニの肖像》)について
2.レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》――「宿命の女」の系譜から
3.レオナルド・ダ・ヴィンチの「二点の聖母マリア」について
4.レオナルド・ダ・ヴィンチの《指さす女性》について――主題と制作年代
5.レオナルド・ダ・ヴィンチの色彩をめぐって――聖母表現における考察
Ⅴ おわりに
図版目録
人名索引

著者|author

田辺清(たなべ・きよし)
大東文化大学国際関係学部教授。専門はルネサンス絵画史・比較芸術学。一九五二年、千葉県生まれ。一九七八-八一年、ロンドン大学付属コートールド美術研究所に聴講生として留学。一九八五年、成城大学大学院博士課程単位取得退学。二〇〇二年より現職(二〇二三年三月定年退職予定)。二〇一七-二一年、大東文化大学図書館長。主要著書に『平凡社版・世界の名画2 レオナルド・ダ・ヴィンチ』(平凡社、一九八三)、『レオナルドの教え――美術史方法論研究会論集』(共著、ボーダーインク、二〇一三)、『天心をめぐる人々』(代表編著、大東文化大学・東洋研究所、二〇二〇)。主要論文に「レオナルド・ダ・ヴィンチと東方――《聖ヒエロニムス》をめぐって」(『東洋研究』第一六五号、二〇〇七、大東文化大学・東洋研究所)、「再考・レオナルド・ダ・ヴィンチと東方」(『東洋研究』第二一六号、二〇二〇、大東文化大学・東洋研究所)、「レオナルド・ダ・ヴィンチと古典古代――東方との関連について」(『東洋研究』第二二五号、二〇二二、大東文化大学・東洋研究所)。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

江戸時代の唐画―南蘋派、南画から南北合派へ

江戸時代の唐画

南蘋派、南画から南北合派へ

  • 伊藤紫織(著)/2023年3月
  • 6500円(本体)/A5判上製428頁
  • 装丁:長田年伸

「唐画」の成立と伝播のありようをひもとく――
江戸時代中期以降の日本絵画の諸相を、「唐画」の語に注目して横断的に解き明かす。京都、大坂、江戸の複数の画派に関する実証的な検討を行い、その変遷を様式や題材から総合的に捉える。
(ISBN 9784861108570)

目次|contents

はじめに
第一章 唐画の広がり
第二章 京都の唐画
第三章 大坂の唐画
第四章 江戸の唐画
補論 『賞春芳帖』と岩垣龍渓主催松蘿館詩社
おわりに
あとがき
参考文献一覧
初出一覧
図版出典
索引

著者|author

伊藤紫織(いとう・しおり)
一九六九年、富山県生まれ。一九九二年、東京大学文学部美術史学専修課程卒業。一九九四年、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。一九九四年~二〇一五年、開設準備室を経て千葉市美術館学芸員。二〇一一年、東京大学大学院人文社会系研究科美術史学専攻博士、課程単位取得退学。二〇一三年、博士(文学)を東京大学より授与。二〇一五年、尚美学園大学准教授。この間、実践女子大学、千葉大学、立教大学の非常勤講師を務める。現在、尚美学園大学教授。主な著書・論文に「森蘭斎について――支持者との関わりを中心に――」(『美術史』一五六、二〇〇四年)、「死絵と画中画――肖像としての死絵」(『死生学研究』一一、東京大学大学院人文社会研究科、二〇〇九年)、大久保純一責任編集『日本美術全集15 浮世絵と江戸の美術』(小学館、二〇一四年、共著)、『光琳を慕う――中村芳中』(芸艸堂、二〇一四年、共著および編集)「新名所の虚実――『松川十二景和歌色紙帖』(相馬市教育委員会)をめぐって」(『尚美学園大学芸術情報研究』二九、二〇一八年)、「真景図のつくられ方」(板倉聖哲・高岸輝編『日本美術のつくられ方――佐藤康宏先生の退職によせて』羽鳥書店、二〇二〇年)。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

現代の皮膚感覚をさぐる―言葉、表象、身体

現代の皮膚感覚をさぐる

言葉、表象、身体

  • 平芳幸浩(編)/2023年3月
  • 3700円(本体)/四六判上製264頁
  • 装丁:コバヤシタケシ
  • 装画:げこる 「ここかも」(2021年)

デジタル・デバイスが浸透し、ヴァーチャルな空間での活動が増加する現代社会においてもなお/であるからこそ、皮膚はファジーで錯綜的、非局所的な身体感覚のトポス(在処)としてある。
現代の表現行為や日々の営為における皮膚感覚、その意義と可能性に触れなおす。

(ISBN 9784861108495)

目次|contents

序論  皮膚感覚について [平芳 幸浩]
第1章  かゆみの哲学断章―哲学的触覚論のゆくえ  [藤田 尚志]
第2章  皮膚と時間―作品の「身体」性格を再考する  [若林 雅哉]
第3章  陶器のようにつるりとした背中―村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』における皮膚  [高木 彬]
第4章  シームレスの美学―ファッションと皮膚感覚  [平芳 裕子]
第5章  プラスチックが蠢く、プラスチックと蠢く―『寄生獣』における皮膚(感覚)  [太田 純貴]
第6章  ピピロッティ・リストのヴィデオ・インスタレーションにおける皮膚感覚  [牧口 千夏]
第7章  皮膚感覚としての「建築する身体」―荒川修作+マドリン・ギンズあるいはヘレン・ケラー  [平芳 幸浩]
第8章  サーフェスとイメージ―新しい映像創作がもたらす皮膚感覚  [池側 隆之]

あとがき
参考文献一覧
執筆者一覧

編者|editor

平芳幸浩(ひらよし・ゆきひろ)
京都工芸繊維大学デザイン・建築学系 教授。近現代美術。
主な著作に、『マルセル・デュシャンとは何か』(河出書房新社、2018年)、『日本現代美術とマルセル・デュシャン』(思文閣出版、2021年)など。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

近代市民社会の信仰と音楽―オラトリオは「聖」か「俗」か

近代市民社会の信仰と音楽

オラトリオは「聖」か「俗」か

  • 瀬尾文子(著)/2023年3月
  • 5000円(本体)/A5判上製420頁
  • 装丁:毛利一枝

キリスト役を一人の歌手が担うのは不遜なこと?

19世紀ドイツの市民社会において、オラトリオという「教会と歌劇場の間」で揺れ動くジャンルは、どのように変容したのか。メンデルスゾーン作《エリヤ》の楽曲分析などをもとに、宗教的な題材の芸術化、また、それを演奏するということについて一考を促す刺激的著作。

(ISBN 9784861108389)

目次|contents

序――教会音楽の世俗化の論理を問う

【第一部】
第一章 オラトリオは教会音楽か?―― 一九世紀におけるジャンル概念の拡大
1.オラトリオ・ブームと議論の勃発
2.流行の要因――ナショナリズムと教養主義
3.新ジャンル創設の意識
4.素材の問題

第二章 オラトリオの物語はいかに表すべきか――オラトリオ論における詩の形式の議論
1.詩の三形式(エピック・リリック・ドラマチック)
2.オラトリオ論の流れ――リリックからドラマチックへ
3.エピック派の少なさと時代の趣向
4.趣向の変化の要因――リアリティおよびエンターテインメント性の追求

第三章 キリスト役は歌ってよいか――聖なる存在の具象化の問題
1.ベートーヴェン《オリーヴ山のキリスト》(一八〇三年ヴィーン初演)
2.シュポーア《救世主の最期のとき》(一八三五年カッセル初演)

第四章 オラトリオは何を主題とすべきか――崇高の表現への挑戦
1.「崇高」概念とオラトリオの関連
2.「最後の審判」オラトリオ二作品の概要
3.アーペルの作品構想と「崇高」概念
4.ロホリッツの作品構想と「崇高」概念

【第二部】
第五章 実際の演奏の場の宗教性――ニーダーライン音楽祭の場合
1.一九世紀前半のドイツの音楽祭
2.ニーダーライン音楽祭の実態
3.ニーダーライン音楽祭が目指したもの

第六章 メンデルスゾーン《エリヤ》のドラマ・トゥルギー――独自のエンターテインメント性の追求
1.作風の変化の理由
2.シュープリング宛書簡中の「ドラマチック」への言及
3.「ドラマチック」の内実の分析
4.根本主題「見えざる神の接近」
5.根本主題の意義――なぜ、「見えざる神の接近」だったか

結語――宗教と娯楽を両立させるドラマチック・オラトリオ

付録 《エリヤ》全体像

著者|author

瀬尾文子(せお・ふみこ)
国立音楽大学准教授。東京大学大学院人文社会研究科博士課程修了(美学芸術学専攻)。博士(文学)。日本シェリング協会第一六回研究奨励賞受賞。主な論文に「ファニー・ヘンゼルのカンタータ《ヨブ》」のジェンダー論的解釈試論」(『美学美術学研究37』二〇一九年)などがある。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

「新ドイツ派」の成立―リストと彼の仲間たちによる進歩的音楽集団

「新ドイツ派」の成立

リストと彼の仲間たちによる進歩的音楽集団

  • 上山典子(著)/2022年12月
  • 4500円(本体)/A5判上製234頁
  • 装丁:長田年伸

ベルリオーズ、リスト、ワーグナーの「三人組」一派?
19世紀半ばの音楽ジャーナリズム上で繰り広げられた標題音楽の理念およびベートーヴェンの遺産継承をめぐるいわゆる進歩派と保守派の美学論争を出発点に、19世紀後半のヨーロッパ音楽史における「新ドイツ派」概念の解明を試みる。
(ISBN 9784861108433)

目次|contents

はじめに
第1章 音楽史研究と「新ドイツ派」
第2章 「未来音楽」をめぐる論争
第3章 「新ドイツ派」の提唱
第4章 「新ドイツ派」概念の変化
第5章 「新ドイツ派」の発展
おわりに
あとがき
参考文献
索引

著者|author

上山典子(かみやま・のりこ)
東京芸術大学楽理科卒業、同大学院博士課程修了、博士(音楽学)。現在静岡文化芸術大学文化政策学部准教授。専門は西洋音楽史、とくにリストと19 世紀の音楽文化、ピアノ編曲の文化史など。共著書に『音楽表現学のフィールド2』(東京堂出版、2016)、『ワーグナーシュンポシオン』(アルテスパブリッシング、2018)、『《悪魔のロベール》とパリ・オペラ座』(上智大学出版、2019)、『音楽を通して世界を考える』(東京藝術大学出版会、2020)など。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

演劇の公共圏

演劇の公共圏

  • クリストファー・バルミ(著)、藤岡阿由未(訳)/2022年4月
  • 3273円(本体)/四六判並製362頁
  • 装丁:中本那由子

古代ギリシャから現代のSNSにおける議論まで……多様なケーススタディをもとに「公共圏」の視点から演劇の歴史を辿り、民主主義の議論の場における「制度」として演劇がどのような役割を果たしてきたのか論じる。

検閲と演劇の関係とは? 「炎上」のもたらす意味とは? 「表現の自由」とは?  

(ISBN 9784861108068)

目次|contents

序文二〇二二
はじめに
序論
 公共圏とは何か、どこにあるのか
 観衆、観客、公共圏
 パフォーマンスと公共圏
第一章 演劇の公共圏を位置づける
 パブリックからプライベートへ
 アゴーン的な公共圏へ
 真実を演じる―パレーシア
 抗議と仲裁
 制度の基盤
第二章 互恵的な発信―プレイビルからブログまで
 プレイビルとその観客
 公共へ入る
 互恵的な回路
 批評のメディア
第三章 開放と閉鎖―ピューリタンと晒し台
 パンフレット、説教、小冊子―公の言説と密かな言説
 演者と議論
 攻撃と攻撃への反発
 最後の一撃
 ウィリアム・プリンの公開殉教
 禁制の条例
第四章 舞台の預言者―演劇・宗教・越境する公共圏
 マホメットの帰還
 ショー・マスト・ゴー・オン―ベルリンのポスト・オリエンタリズム
第五章 スキャンダルの公表と寛容の境界
 ワイマールのスキャンダル―性、人種、そして法律
 法律の視点
 情動の公共圏と神への冒涜という政治
 炎上とブラック・フェイス
第六章 演劇美学の分散とグローバルな公共圏
 遊戯的な過剰同一化―クリストフ・シュリンゲンジーフの『お願い、オーストリアを愛して!』
 『コール・カッタ』―親密圏
 他のアーティストもいる
 踊る多文化主義―DV8フィジカルシアター『これについて語りあえるのか?』

訳者あとがき
図版一覧
参考文献
索引

著者|author

クリストファー・バルミ(Christopher B. Balme)
ミュンヘン大学教授、同大学演劇学科長。主な著書に『演劇のグローバリゼーション1870-1930』(2020)、『ケンブリッジ演劇学入門』(2008)、『パシフィックの演劇』(2007)、『脱植民地化する演劇』(1999)などがある。

訳者|author

藤岡阿由未(ふじおか・あゆみ)
椙山女学園大学教授、演劇学。編著『ロンドンの劇場文化』(2015)、編著『演劇の課題2』(2015)、編著『演劇の課題』(2011)などがある。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

戦後日本のコミュニティ・シアター― 特別でない「私たち」の演劇

戦後日本のコミュニティ・シアター

特別でない「私たち」の演劇

  • 須川渡(著)/2021年11月
  • 4500円(本体)/A5判上製370頁
  • 装丁:中本那由子

「演劇で食べていく」のみにあらずの演劇の形
戦後日本における、演劇に従事しない素人の演劇活動「コミュニティ・シアター」の実態を考察。岩手県を拠点とする劇団ぶどう座の「地域演劇」や、占領期の「円形劇場」運動、障害者施設での演劇実践など、多様なコミュニティのなかで繰り広げられる演劇の豊かな在り様を探る。2020年に逝去したぶどう座代表・川村光夫氏のインタビューも収録。
(ISBN 9784861107641)

◆日本演劇学会 2022年度日本演劇学会河竹賞奨励賞 受賞

目次|contents

はじめに

序章 コミュニティ・シアター概観

第1部 劇団ぶどう座の地域演劇
第1章 地域演劇の試行――劇団ぶどう座創設
第2章 サークル文化運動としての演劇実践――稽古場建設運動・『嵐と沼』・『町長選挙』
第3章 ローカリティを越える民話劇――劇団ぶどう座『めくらぶんど』
第4章 民話劇の系譜――劇団ぶどう座『うたよみざる』
第5章 地域演劇のこれから――銀河ホール創設からの広がり

第2部 コミュニティ・シアターの実験――円形劇場を中心に
第6章 日本占領期における「円形劇場」の試み――CIEによる普及活動を手がかりに
第7章 劇空間の革新――大阪円型劇場研究会・月光会(一九五二〜六二年)の理論と実践

第3部 秋浜悟史の演劇実践――東北から関西へ
第8章 秋浜悟史の劇作品における「故郷」――『冬眠まんざい』『啄木伝』
第9章 循環するドラマ――知的障害者施設あざみ・もみじ寮の演劇実践

資料
1 川村光夫 インタビュー
2 劇団ぶどう座および川村光夫年譜
3 大阪・円型劇場研究会月光会 上演リスト(一九五二~六二年)
4 秋浜悟史および知的障害者施設あざみ・もみじ寮における演劇活動年譜

おわりに

謝辞
初出一覧
主要参考文献一覧
索引

著者|author

須川渡(すがわ・わたる)
福岡女学院大学人文学部准教授。大阪大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。専門は演劇学。主に東北地方の農村を中心とした戦後日本の地域演劇について調査研究を行っている。共著に『漂流の演劇――維新派のパースペクティブ』(大阪大学出版会)がある。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

一九四〇年代素人演劇史論―表現活動の教育的意義

一九四〇年代素人演劇史論

表現活動の教育的意義

  • 小川史(著)/2021年3月
  • 5000円(本体)/A5判上製336頁
  • 装丁:長田年伸

演劇を通して表現することをめぐる、自発的・主体的なあり方とは?
明治末期に民衆芸術として生まれ、昭和期の戦時体制で用いられた素人演劇の変遷を、その特性や社会状況から克明に考究。演劇と表現活動に含まれる教育的な意味を検討し、生活に根ざした表現による自他理解の様相を描き出す。
(ISBN 9784861107177)

目次|contents

はじめに
序論
第1節 研究の課題と意義
第2節 先行研究および資料
第3節 本書の構成
第1章 素人演劇の前史
第1節 地域への新劇の波
第2節 坪内逍遥の公共劇
第3節 素人演劇の戯曲分析
第2章 戦時下における素人演劇運動――自発性をめぐる総動員体制のジレンマ
第1節 素人演劇運動の誕生
第2節 演劇行政の展開
第3節 素人演劇運動の展開
まとめ
第3章 素人演劇運動の理論
第1節 理論の全般的傾向
第2節 生活協同化の推進
第3節 生活感情の表現
第4節 「生活訓練」の場としての舞台
まとめ
第4章 戦時下素人演劇運動の実際
第1節 地域における素人演劇運動の実態
第2節 素人演劇の戯曲に見る「新体制」の提示
第3節 素人演劇の指導と練習過程
第4節 上演における統合の様態――「観衆の導き方」から「国民の導き方」へ
まとめ
第5章 敗戦直後の素人演劇と表現の獲得
第1節 敗戦をめぐる経験の差異
第2節 敗戦直後の風景
第3節 民衆の精神的危機と演芸
第4節 農村における演劇活動――表現の獲得
まとめ
第6章 戦後労働者の素人演劇――自立演劇の展開過程
第1節 自立演劇をめぐる教育的な問題状況
第2節 自立演劇の成長と転換
第3節 自立演劇をめぐる諸問題
まとめ
第7章 演劇を通した表現と関係性への問いかけ――自立演劇の実践
第1節 労働者にとっての経験と表現
第2節 自立演劇の指導をめぐる問題
第3節 労働者の演劇実践
第4節 日常と関係性の捉え直し
まとめ
結論
あとがき

著者|author

小川史(おがわ・ちかし)
横浜創英大学こども教育学部教授。専門分野は社会教育史・演劇教育。早稲田大学大学院教育学研究科博士課程修了、博士(教育学)。主な著書・論文に『野の語り部――桑の里にひびきあう今むかし』(筑波書房)、「戦時下における素人演劇運動の研究――自発性をめぐる総動員体制のジレンマ」(「早稲田教育評論」18(1))、「平澤計七の戯曲にみる労働者の主体と暴力」(「社会教育学研究」51(2))。

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する

イタリア・宝塚・2・5次元―多彩な演劇世界をめぐって

イタリア・宝塚・2・5次元

多彩な演劇世界をめぐって

  • 鈴木国男(著)/2021年3月
  • 2900円(本体)/四六判並製316頁
  • 装丁:中島衣美

コンメディア・デッラルテ、エリザベート、テニミュ……
演劇文化を織りなすさまざまなジャンルを読み解き、そのつながりを探る。
演劇の豊かさを再発見する旅への招待。

(ISBN 9784861107375)

目次|contents

第1部 イタリア演劇――仮面からリアリズムへ
第1章 顔と仮面
第2章 イタリアの世紀末
第3章 廃墟の幕切れ─―『女の一生』と『ナポリ女百万長者』
第4章 ルキーノ・ヴィスコンティの演劇活動
コラム 間奏曲Ⅰ

第2部 宝塚歌劇――変容と拡大
第1章 宝塚大劇場誕生
第2章 トゥーランドット変容
第3章 エリザベート変容
第4章 現代演劇における「世界」の構築――宝塚歌劇団とスタジオ・ライフ
第5章 宝塚歌劇における2・5次元
コラム 間奏曲Ⅱ

第3部 2・5次元ミュージカル――2次元と3次元のあわいに
第1章 2・5次元ミュージカル概観
第2章 2・5次元ミュージカルの発展
第3章 『テニミュ』世界の構築

あとがき
参考文献
図版一覧
初出一覧

著者|author

鈴木国男(すずき・くにお)

東京大学イタリア文学科卒業
共立女子大学文芸学部教授

この本を注文する

Amazonで注文する Hontoで注文する 楽天ブックスで注文する